顔料

 染料と顔料の違いは、

染料は、自らの力で対象繊維に染まることができるが、

顔料は、自らはできない、

とも言えます。

(1)顔料

 顔料は、白と黒以外はほとんど有機色素です。白は酸化チタン、黒はカーボンブラックの顔料です。濃い地色の上に淡色の柄をプリントする場合に、隠蔽力のある体質顔料が使われます。

 顔料は、樹脂皮膜の中に分散して、樹脂の接着力によって対象物に着色していきます。樹脂は、顔料の混和性が良くなくてはなりません。一般には、アクリル系樹脂が用いられています。最近では、接着性が良く皮膜が柔軟なウレタン系樹脂も使われるようになりました。

 

(2)バインダー

 アクリル樹脂は、乳化重合という方法で製造されます。アクリルエマルジョンと呼ばれます。

 水中にアクリル樹脂の微粒子が乳化分散されている状態から、乾燥しフィルム形成していく過程を住化ケムテックスのサイトから引用します。

 ガラス板上に塗布されたエマルジョンが乾燥し、連続皮膜になっていく形成過程です。乾燥した時点では、粒子の集合体ですが、熱運動によって皮膜になります。皮膜を形成する最低温度を、MFFT と言います。

 大部分のアクリルエマルジョンは 0℃ 以下で、乾燥したら連続皮膜を形成しますが、T シャツなどにプリントした場合、アイロンで熱処理するとさらに堅牢性が向上します。酸化チタンや体質顔料を使った顔料濃度の高いものも熱処理した方が堅牢性が良くなります。

 アクリルエマルジョンをバインダーと呼びます。

 

(3)色糊・インク

 顔料とバインダーを水に溶かしますが、適正な粘性がなければプリントできません。プリントできる粘性に調整しますが、バインダーの造膜性を阻害しないようにしなければなりません。1つは、ターペンを乳化したエマルジョン糊を使用する方法で、もう1つは、ポリカルボン酸系などの水溶性高分子で調節する方法です。

 ニーズによって、付加機能を与える助剤を添加します。

洗濯堅牢度を向上させる架橋剤は、T シャツプリントによく使われます。常温架橋型を使う場合、架橋剤添加後は、その日に使い切ります。

 その他、乾き防止剤、消泡剤、浸透剤、柔軟剤などがあります。

 

 以上をまとめると、顔料プリントするには、

顔料

バインダー

粘性調整剤

助剤

の配合になります。絵画の「アクリル絵の具」、塗料の「水性ペンキ」も基本的には同じ組成です。

 

 調合したものを、捺染では色糊、版画ではインクと呼ばれています。版画用インクは、アクリル絵具と同じ感覚で、色ごとに調合されてものが提供されています。

 

 捺染では、バインダーと増粘剤で調合した白糊(台糊とも言います)を作り、顔料を添加します。予め調合した白糊をインスタント糊と呼び、使いやすい形で提供されています。

 

 実際に使ったことがある薬剤を紹介します。すべて藍熊染料のものです。

 

3点セットで白糊を作ります。

スーパーバインダー BNN --- アクリルエマルジョン

NK レジューサー --- ターペン乳化エマルジョン糊

ニュースーパーノール X --- 粘度調整

 

インスタント糊

ソフトホワイト FLN --- 酸化チタン配合インスタント糊。 

スペシャルバインダー (マットベース) --- 体質顔料配合インスタント糊。

 

 ※酸化チタン、体質顔料を配合していない白糊もありますが、私は使っていません。

 

架橋剤

架橋剤 M-2 --- 常温架橋型。

 

 田中直染料店にもそれぞれ相当するものがあります。

==閑話==

(1)風合い

 版画では風合いは関係ありませんが、衣料の顔料プリントでは、風合い硬化が大きな欠点になります。

 染めた T シャツに抜染しないでプリントするには、地色を隠す隠蔽力が必要で、体質顔料配合インスタント糊を使うことにより風合いは硬くなります。ニット用に伸びるバインダーを使った「ラバーバインダー」もありますが、風合いは損なわれてしまいます。

 白地にプリントする場合には、エマルジョン糊が推奨です。綿の T シャツなら、架橋剤を使えば堅牢性もそこそこです。

 

(2)体質顔料

 体質顔料として使われているものは、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウムなどがありますが、隠蔽力が一番強いのは、白色顔料として使われている酸化チタンだそうです。 実際に、白色インスタント糊をこの目的で使っています。ただ、酸化チタンの白としての馬力が強いのか、顔料をかなり打たないと色が出てきません。

 

(3)プリント後のスクリーン洗浄

 顔料をプリントする時は、一回毎に洗っています。洗う時は、もう完全に洗えたと思ってからもまだ濯ぎます。そして乾いた雑巾で水分を拭き取ります。顔料が残って、一旦乾くとまず落とせません。濯ぎ不十分で乾かすと、わずかな汚れが乾燥中にマイグレして集まってきますので、目が詰まってしまう可能性があります。

 

(4)試行中ですが、、、

 木工用などで使われている酢酸ビニール系エマルジョンは、安価で、コスト削減できます。しかし、耐水性が弱く、皮膜が硬いです。堅牢性が要求されない紙に限って使っています。

 製本用に使われる ボンドB-1(コニシ)は、木工用ボンドに比べ、皮膜が柔軟です。入り目が、3Kgです。

 少し薄めると、粘性もプリントに適してきます。

使用に当たっては、

 粘着力が大きいので、粘度を低めにする、

 乾燥が早いので、尿素を添加する、

ことで、使いやすくなります。

 

 ただ、アクリルエマルジョンに比べると、安定性、乾燥性など同等とは言い切れませんので、留意ください。