水溶性高分子

 水のような粘度の低いものは、スキージで刷っても紗を通過していきません。適正な粘性を与えるのに水溶性高分子が使われます。

 水溶性高分子の中でプリントに重要なのは、顔料用の合成高分子と反応染料用のアルギンです。

(1)水

 水分子は、酸素原子1、水素原子2からできています。模式図をカケンのサイトから引用します。

同サイトの解説です。

「酸素や窒素など、電子をひきつけやすい原子と共有結合した水素原子は電子を引っ張られて弱い正電荷を帯び、隣接原子の持つ負電荷との間に共有結合の10分の1程度の弱い結合を生じる。これを水素結合と呼ぶ。水分子の場合、酸素原子のもつ6つの価電子のうち、2つの電子が2つのO-H結合に関与して、残りの4つが2組の孤立電子対となり、隣接する水分子と合計で4つの水素結合を作ることができる。」

 

 その模式図を同サイトから引用します。

 水素結合は、共有結合に比べると弱い結合です。液体の水は、瞬間瞬間で形を変えたクラスター構造をとっています。クラスター構造の例を大阪市立大学のサイトから引用します。

(2)水に溶ける

 水のように電子が偏った分子を極性分子と呼びます。

極性を持った分子は、水に溶けます。極性を持たない(電子の偏りのない)もの、例えばパラフィン、は水に溶けません。

 「よくわかる分子生物学(秀和システム)」から引用します。

「水中でプラス電荷とマイナス電荷に分かれる物質には、それぞれ水分子のマイナス側とプラス側が引きつれられます。つまり水分子が集合するわけです。」

として、代表例として食塩(塩化ナトリウム)と糖(グルコース)を上げています。

 塩化ナトリウムは、水中でナトリウムイオン(プラス)と塩素イオン(マイナス)に解離します。」

 グルコースは、水酸基( -OH )を持ち、極性を持っています。

(3)顔料用増粘剤

 顔料捺染は、主にターペンのエマルジョン糊が使われており、乳化剤に増粘剤を配合したものが使用されています。代表的なものが、花王のエマノーン 3299RVです。

その技術資料から引用します。

 顔料捺染の堅牢度を低下させている原因は、乳化剤です。乳化剤を使わない、ソープレス処方が開発されました。

アルカリ増粘型ポリマーを使うもので、その概念を文献、

石原:レオロジーコントロール剤、色材、72 (5) 328-336 (1999)

から引用します。

 このような合成水溶性高分子の増粘剤は、絵画用のアクリル絵具、水溶性塗料などの分野に広く使われています。

(4)反応染料用糊材

 綿の主成分はセルロースです。セルロースはグルコースが連なった高分子です。住化ケムテックス(株)の技術資料、染料各論の最初のページからセルロースの化学構造を引用します。

 綿などのセルロース繊維は水酸基( -OH )を持っていて反応染料が反応しますが、反応染料に使う色糊の成分が反応染料と反応しては困ります。しかし、色糊として使う糊材は、水溶性高分子であるので、分子中に水酸基( -OH )を持っています。

 

 唯一、反応染料と反応しない糊材が、アルギンです。

 化学構造を富士化学のサイトより引用します。

セルロースと似た構造ですが、反応性の大きい1級水酸基( -CH2-OH )が、カルボキシル基( -COOH )に置換されています。まだ、水酸基( -OH )が残っていますが、反応基を2つ持っている CI Black 5 を捺染しても脱糊性が低下しません。この理由を調べたのですが文献が見つかりません。多分、アルカリ下でアルギンのカルボキシル基は、マイナスに帯電するので、同じくマイナスの反応染料をイオン的にブロックしているのではと考えています。